笑いすぎにご用心?その笑顔不快になってませんか
接客、商談、面接、婚活……普段の生活の中で良い印象を与えるために笑顔をつくる、という機会は数多くあるでしょう。 最近では、笑顔をトレーニングするためのソフトウェアが登場するくらい笑顔の役割は再注目されています。 ところで笑顔を作っていればどんな笑顔でもよい、と考えている人はいませんか。 最近の研究では、社会的な評価が低くなる笑顔があることが報告されています。 今回はそうした研究をふまえて好印象を与える笑顔を作る方法について考察します。
笑顔研究でわかる評価の高い笑顔とは
笑顔を作るとき、おもに目と口が動きます。目の動きの重要性については、 人工知能に学ぶ魅力的な笑顔の作り方で取り上げました。 最近は口の動きも他人に良い印象を与えるうえで重要であることが研究で報告されています。
ミネソタ大学のNathaniel E. Helwig氏らの研究グループでは、顔面まひなどで表情を動かすことが困難になってしまった人が表情を取り戻す目標となる、他人に良い印象を与える笑顔を調査しました。
調査では、CGアニメーションで口を変化させた複数の笑顔のパターンを作成しました。これを不特定多数の人に見せ、評価を集計するというものです。
調査で使われた表情。ミネソタ大の研究(※)による。
口角(Mouth Angle)、笑顔の広がり具合(Smile Extent)、歯を見せる程度(Dental Show)、笑顔の左右対称性を変化させた54パターンの動く笑顔が用意されました。
表情の変化部分。口角(Mouth Angle)は青線と緑線の角度、笑顔の広がり具合(Smile Extent)は緑線の長さ、
歯を見せる程度(Dental Show)は上下の唇の距離。ミネソタ大の研究(※)による。
調査では、802人の参加者に笑顔について効果があるか(effectiveness)、本物であるか(genuineness)、楽しいものか(pleasantness)、 どのような感情を感じるか(perceived emotional intent)という点を評価してもらいました。 結果、口角は中~高、笑顔の広がりは低~中の笑顔が高い評価を得ました(下図の濃い緑の表情)。
各顔の背後の3つの色は、笑顔の効果(effectiveness)、笑顔が本物であるか(genuineness)、
笑顔の楽しさ(pleasantness)を示す。緑色は高い評価の笑顔、赤色は評価の低い笑顔に対応する。
ミネソタ大の研究(※)による。
興味深い点として次の2点が指摘されています。(1)口角を極端に動かすと評価が下がる。(2)歯を見せることの効果は口角と笑顔の広がり具合の組み合わせによって変化する。 口角と笑顔の広がり具合が小さければ、歯を見せすぎないほうが評価が高く、逆に、口角と笑顔の広がり具合が大きければ、歯を多く見せたほうが評価が上がるのです。
(a)口角と笑顔の広がり具合が小さい笑顔。 歯を見せると評価が下がる。
(b)口角と笑顔の広がり具合が大きい笑顔。 歯を見せると評価が上がる。
ミネソタ大の研究(※)による。
なお、参加者が表情から感じる印象では、「幸福」が最も多く、不快な感情の中では「軽蔑」が最も多かったということです。 たとえば、口角と笑顔の広がり具合が小さい状態で口をあけると、「軽蔑」や「恐れ」の印象を与えやすくなります。
この研究は、より大きく笑えばいいわけではなく、笑顔には評価が上がりやすい組み合わせが存在することを教えてくれるのです。
※出典:Nathaniel E. Helwig, Nick E. Sohre, Mark R. Ruprecht, Stephen J. Guy, Sofía Lyford-Pike. Dynamic properties of successful smiles. PLOS ONE, 2017; 12 (6): e0179708 DOI: 10.1371/journal.pone.0179708
研究を受けて――自然に笑うことが大事?
人間の笑いには大きく分けて「作り笑い」と「自然発生的な笑い」があります。 今回の研究結果は、作り笑いでもより自然に笑うほうが評価が高くなると捉えることができるのではないでしょうか。 評価には「笑顔が本物であるか否か」という基準が入っているため、該当するスコアが高くなるのは当然ですが、 他の2つの評価基準である笑顔の「効果」と「楽しさ」も無理のない表情のスコアが高かったのです。 たとえば、評価が低かった「口角を極端に動かす笑顔」は不自然です。 また、小さく笑う場合(口角と笑顔の広がり具合が小さい笑顔)は歯が見えないほうが評価が高く、 大きく笑う場合(口角と笑顔の広がり具合が大きい笑顔)は歯を見せるほうが評価が高いという結果も不自然でない組み合わせが好まれるからと解釈できます。 人間は表情の不自然さを敏感に察知し、ひょっとして本心を隠ぺいするために笑顔を作っているのではないかと疑念を抱くものです。 自然な笑顔の重要性を示唆しているのではないでしょうか。
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