《シリーズ笑い祭り》知る人ぞ知る「八幡神社 お笑い神事」
日本には、笑うことを神事や祭りの主に据えた「笑い祭り」が数多くあります。 そんな「笑い祭り」を一つ一つ掘り下げて紹介する《シリーズ笑い祭り》。第二回目は兵庫県西脇市八幡神社の「お笑い神事」です。
笑い祭りのなかで、有名なものは、「笑い講」「笑い祭」「酔笑人神事」「山の神祭り」「注連縄掛神事」の五つです。これらを「五大笑い祭り」とすると、今回紹介する「八幡神社 お笑い神事」はマイナーな笑い祭りのうちの一つです。文献資料に乏しく、手に入る資料といえば、八幡神社のHPの資料、Youtubeの動画、自治体(西脇市)のホームページのちょっとした紹介文くらいです。《シリーズ笑い祭り》の例によって少しだけマニアックに紹介します。
神事・祭りデータ
場 所:兵庫県西脇市下戸田626 西脇八幡神社拝殿
アクセス:JR比延駅から徒歩で20分 JR西脇市駅からタクシー又はバス
開催時期:毎年「体育の日」直前の土日曜日 2017年は10月8日(日)10時頃~11時頃
地 図:下記参照
「八幡神社 お笑い神事」はこんな祭り
10月の体育の日の前の土日の例大祭に行われます。祭りを行うのは4地区から2名ずつ集められた合計8名の頭人です。
頭人には「本頭人」と「提灯持ち」という異なる役割があり、各地区で1名ずつ割り当てられます。
祭りの次第を八幡神社の資料をもとに説明します。
- 「本頭人」は白扇を開き、右手に持つ。「提灯持ち」は八角棒を持つ。
- 「本頭人」と「提灯持ち」は横一列に並び、神社に向かって一礼する。
- 「本頭人」と「提灯持ち」は拝殿に移動し、円形に並ぶ。各地区ごとの「本頭人」「提灯持ち」が交互に並ぶため、白扇と八角棒は交互に並ぶことになる。
- 「本頭人」が白扇を開き、頭の高さに捧げ持つ。「提灯持ち」は八角棒を左肩に担ぐ。
- 一同、時計回りに回るため、左に向きを変える。
- 宮司の発声で、それぞれ白扇・八角棒を上下に動かしつつ、「お笑い、お笑い、アッハッハー」と声高らかに愉快に笑いながら、時計回りに三周する。
- 終了後、一同、神前に礼をする。
手順が多く複雑に思えるかもしれませんが、(6)が神事のメインです。
社伝によると、この神事は大臣の武内宿禰(たけのうちのすくね)が幼い応神天皇を笑わせるために抱きかかえ、「お笑い、お笑い」とあやしている様子をあらわしています。
実際の神事の様子は以下の動画をご覧ください。
神事後は、頭人が東西に分かれて手のひらを合わせて引き押しの相撲を行います。
なぜ笑うのか?――笑いと祈り
八幡神社の笑い神事は秋の例大祭に行われ、神事の後には相撲という年占神事も行われることから、この神事の基本的性格は収穫へ感謝と来年の豊作祈願と考えるのが自然でしょう。
西脇市HP(2010)においても、笑い神事や相撲は豊作を祈願するものだと説明されています。
なぜ、笑いと豊作祈願が結びつくのでしょうか。
祭りがおこなわれる兵庫県西脇市の八幡神社は、品陀別命(=応神天皇)、比賣大神、息長足姫命(=神功皇后)の三柱を祭神とする一般的な八幡宮であり、豊作祈願とは一見結びつきません。
笑い神事では、応神天皇という神様を笑わせるために「お笑い、お笑いアッハッハー」と頭人たちが笑う、という説明がされます。
豊作こそ最大の関心ごとであった昔の日本人が、神様が笑ってご機嫌になれば来年の豊作も約束されるのでは、という考えに至ったとしてもおかしくはありません。
神様は異なれど、和歌山県丹生神社の笑い祭も同様の豊作祈念の背景を持ちます。
ちなみに、こうした祭りの神話的ストーリーは行事の後付けで付加されます。
この場合、まず豊作を願う笑いの神事があり、その後に応神天皇を笑わせる云々というストーリーが添付されたのです。
それにしても、神様を笑わせてご機嫌をとろうという考えは、「神様は人々の影響を受けるもの」という前提がないと成り立ちません。
日本の笑い祭りの構造からは、古来、神様は人間に近い存在だったということが見え隠れしますね。
【WARAI+からのお知らせ】
- iOS版WARAI+Recorderリリースしました。
アップデート内容はWARAI+Recorder iOS版リリース!をご覧ください。 - 人工知能専門の情報メディアAINOW(アイノウ)に掲載されました。ぜひご覧ください。
「昨日どれくらい笑いましたか?」 iOS版もリリース。AIで笑いを可視化するWARAI+を取材しました。