「笑う時間帯」にご用心!笑いで睡眠サイクルを改善するコツ

笑いと健康シリーズ(6)笑いと睡眠の関係(後編)

笑いは睡眠不足の解消に効果があることを、前回のコラム『睡眠不足解消の特効薬は「笑い」にあり!』にて紹介しました。
いつでもゲラゲラ笑っていれば眠れるようになるというわけではなく、実は、夜に大笑いしすぎると眠りにくくなるなど「笑い」には快適な睡眠サイクルを導くために最適な時間帯があることがわかってきました。
今回は、研究で分かってきた睡眠不足解消におすすめの「笑いに適した時間帯」について紹介します。

寝る前に笑いすぎると睡眠の質が低下する

現長崎大学新田先生の研究では、寝る前に90分のコメディビデオを視聴して大笑いをしたとき、寝付くまでの時間が通常より延びてしまうことがわかりました。
また、寝る前に大笑いすると、深い眠り(ノンレム睡眠)の割合が減少してしまう傾向も見出されました。
寝る前に大笑いすることによって、いわゆる「睡眠の質」が低下していたのです。
大笑いによって睡眠の質が低下した原因は3つ考えられます。
まず、笑いにはいくつか種類がありますが、いわゆるお笑いを見たときに生じる笑いは「驚きをともなう笑い」であり、交感神経の活動を促し、覚醒状態をもたらします。
このような種類の笑いをしすぎると過度な興奮状態を笑う人もたらし、眠りにくくなくなってしまうおそれがあるです。
また、笑った後、人間は副交感神経が優位となりリラックスするのですが、お笑いのビデオを見て頻繁に笑うことによって興奮とリラックスを繰り返すことになり、体内環境が不安定になってしまいます。
この状態も睡眠を妨害してしまう要因だと考えられています。
最後に、大笑いによって体温が高くなってしまうことも睡眠を妨害している要因の一つです。
人間が眠りにつくときには徐々に深部体温が下がっていくのですが、大笑いしてしまうと体温の維持・上昇がもたらされるため、寝付きにくくなるのです。
寝る前の少しの笑いは精神的ストレスの減少させ睡眠に有効なのですが、大笑いは逆効果になってしまうことに注意しましょう。
(新田章子,1997,「笑いの睡眠への効果」『笑い学研究』 4 :31-39.)

大笑いは午前中か夕方にして生活サイクルを改善させよう

興味深いことに、前項の新井先生の実験では、寝る前に大笑いした翌日の日中の「覚醒度」はあまり笑わずに眠ったときと比べて高いものになっていました。
これは寝る前に大笑いすることで「睡眠の質」が下がっていたのにもかかわず、日中は元気という不思議な状態です。
日中に活発に動けばその反動で夜にはしっかりと休むという典型的な生活サイクルを送ることができるので、笑いには生活サイクルをリセットして通常に戻す作用があると解釈してもよいでしょう。
また、新田先生によると寝る前に大笑いするのではなく、サーカディアン・リズムで人間の体温が上昇する午前中や夕方にあわせて笑えば、睡眠の質も低下させず、生活リズムを整えるのに最適だということです。
このように笑う時間にも気を配ることで、生活リズムを整えつつ質の高い睡眠を誘導することができるのです。

まとめ

笑い一つにでも生活サイクルや睡眠の質を改善するために最適な時間があるのは意外だったのではないでしょうか。
今回紹介した実験では、被験者が笑っていた時間は19時半~21時まででしたので、大笑いには少なくとも数時間の持続的効果はあることになります。
もしお笑い番組を見る場合や友達と遊びに行く場合は、夜でも早めの時間にするか、なるべく日中か夕方にするのがおすすめです。

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