M-1グランプリ2024 決勝戦・最終決戦の笑い声・拍手の音声解析

M-1グランプリ2024の音声解析 M-1グランプリ

M-1グランプリ2024の笑いと拍手の音声解析をします。

使用するのはWARAI+(ワライプラス)の笑い解析・採点AI「UKETA」。

UKETA(ウケタ)とは?

今回は、決勝戦の最終決戦の解析です。

音声解析の方法

TVerで放送された音声をUKETAで解析します。

UKETAでは笑いや拍手の音量を推定し、その大きさをもとに「ウケた度合い」を評価します。

解析区間はネタ開始~ネタ終了時のBGM直前までです(自己紹介時の拍手はカウントしません)。

音声解析の結果

1組目:真空ジェシカ

真空ジェシカの漫才のテーマは「長渕のコンサートに行きたい」。

コント漫才で、川北氏が長渕剛のコンサートに行くつもりが、間違えてピアノが大きすぎる「アンジェラ・アキ」のコンサートに行ってしまったーーそんなシーンから漫才は始まります。

以下の図がUKETAを用いた解析結果です。

M-1グランプリ2024の最終決戦、1組目真空ジェシカの音声解析グラフ
図1 笑い声と拍手の音量に関する積み上げ縦棒グラフ
縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(分:秒)。

ブルーが笑いの音量、ピンクが拍手の音量です。

縦軸は笑いと拍手の音量の合計値で、笑いや拍手の音量が大きければ大きいほどグラフは縦に伸びます。

特に大きな笑いや拍手が発生したシーンを紹介します。

2分付近

(川北扮する「アンジェラ・アキ」の演奏するピアノが大きすぎることをガクがうまく指摘できるか?という状況で…)
川北:「背景、この手紙♪ 読んで、読む手紙♪」
ガク:「ピアノデカすぎじゃ…
川北:「!!!!!!」

思いのほか凶暴な「アンジェラ・アキ」、その姿にビビってしまうガク氏の様子に笑いが生まれます。

クスクス笑いが多いですが、その時間はかなり長いものでした。

3分付近

(前の続き)
川北:「ウォーウォーウォーウォーウォーオオ♪」
ガク:「静かすぎて隣の長渕がうっすら聞こえてくる

ここでこの漫才で一番大きな「拍手笑い」が生まれました。

緊張感が続く中、前フリの「長渕のコンサート」を思い出させることで大きな笑いが生まれました。

この漫才の笑いと拍手の発生の様子を俯瞰すると、漫才の最初から最後まで笑いや拍手が長く途切れることなく発生していることがわかります。

そのため、漫才を通した笑いや拍手のスコアとしてはかなり大きいものとなりました

ただし、中盤の盛り上がり方と比べると後半の盛り上がり方は突き抜けたものがなく、失速した印象を審査員に与えてしまった可能性があります。

2組目:令和ロマン

令和ロマンの漫才のテーマは「タイムスリップをしてみよう」。

こちらもコント漫才で、くるま氏はタイムスリップ先の「戦国時代の人々」を熱演します。

一方でケムリ氏はその時代に「タイムスリップをした人」となって戸惑いながらもくるま氏の演技にあわせて役を演じます。

M-1グランプリ2024の最終決戦、2組目令和ロマンの音声解析グラフ
図2 笑い声と拍手の音量に関する積み上げ縦棒グラフ
縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(分:秒)。
2分付近

くるま(殿様):「その者は?」
くるま(家来):「この者は『硬き者』でございます」
ケムリ(タイムトラベラー):「『硬き者』…すごい名前」
くるま(家来):ドン!(突然、銃をケムリに向けて撃つ)
       「このように……」
ケムリ(タイムトラベラー):「銃はまだ試してなかった……
ケムリ(タイムトラベラー):「ダメだったらどうするの?危なすぎる……」(困惑)

前半で大きな拍手笑いがおきた場所がここです。

あわや死んでしまう状況という「緊張」状態を一瞬にして緩和することで、大きな拍手笑いが起きました。

4分30秒付近

(突然、戦が始まる)
くるま(殿):「戦だ出会え!」「下がっておれ!」
       (殿が撃たれる)
くるま(家来):「殿!殿!」「貴様ら!」
        「このままでは!我が国が!」
くるま(姫):「熊猿……」
       (姫の涙がケムリに落ちる)
ケムリ(熊猿):「うおおおお!
       (覚醒した熊猿が両手を振って敵をなぎ倒す)
ケムリ(熊猿):「僕は硬い!熊猿です!

戦に巻き込まれたケムリ氏が自らの「身体の硬さ」を活かして襲来した軍勢をなぎ倒す一幕。

ヒーロー映画のようなドラマチックなシーンが情景として目に浮かびながら、タイムトラベラーから身体が硬い「熊猿」になることを受け入れた展開の面白さがあり、この決勝大会で一番大きな拍手笑いが発生しました。

漫才全体を俯瞰すると、拍手笑いをコンスタントにとっていること、徐々に笑いや拍手が大きなものに発展していくという、高評価のための王道パターンを徹底した漫才でした。

3組目:バッテリィズ

バッテリィズの漫才のテーマは「世界遺産に行ってみたい」。

オーソドックスなしゃべくり漫才スタイルで、世界遺産について、エース氏が寺家(じけ)氏に尋ねるというもの。

M-1グランプリ2023の最終決戦、3組目バッテリィズのUKETA解析グラフ
図3 笑い声と拍手の音量に関する積み上げ縦棒グラフ
縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(分:秒)。
50秒付近

寺家:「スペインのサグラダファミリアは教会なんだけど、140年工事していてまだ完成していないというほど大きな建物」
エース:「お前、俺が世界遺産のこと何も知らないから騙そうとしているやろ」
寺家:「騙そうとしてない、これめちゃくちゃ有名で皆さん知ってはるよ」
エース:「なんで俺スペインまで行って、工事現場いかなアカンねん

誰にでもわかりやすいボケとツッコミでこの漫才の前半で一番の拍手笑いがでました。

3分30秒付近

(タージ・マハルやピラミッドという「お墓」の世界遺産の紹介が続いた後)
エース:「大阪にはないの?」
寺家:「大阪にも教科書に載るくらい有名なやつがあるけどお前には合わないのよ」
エース:「合う合わないでなく教えてくれたらいいのよ」
寺家:「大阪には大仙公園という有名なところがある」
エース:「その公園は何で有名なの?」
寺家:「横にめっちゃデカい鍵穴みたいなのがあって」
エース:「鍵穴は何なん?」
寺家:「何とかはもうええやん」
エース:「何かわかって行ったほうがええやん」
寺家:「お墓やわ
エース:「もうええって!

この最後のシーンでこの漫才で一番の拍手笑いが起きました。

先の展開が予想がされやすい点はありましたが、ハイテンポながら誰にでも理解できる漫才だったと思います。

笑いや拍手は継続的に発生しましたが、音量は控え目でした。また、先の2組よりもネタの時間が1分程度も短く、笑いや拍手の合計時間としてはかなり短いものとなりました。

審査結果との比較

最後に、審査員の票数と笑いと拍手の音量の平均値、最大値、合計値との比較をしてみましょう。

最大音量とは

最大音量とは、「ネタ中に最も大きかった笑い+拍手の音量」です。

ネタ中に最も盛り上がった箇所の特定とその盛り上がりの大きさを知るために役立ちます。

下図では、水色部分+ピンク部分の最も大きい箇所です(矢印部分)。

笑いと拍手の最大音量
図4 最大値

合計音量とは

合計音量とは「ネタ中に発生した笑いと拍手の合計音量」です。

ネタを通してどれだけお客さんを盛り上げたかの総量として考えることができます。

前掲の図では、水色部分の面積+ピンク部分の面積に相当します。

平均音量とは

平均音量とは、「ネタ中に発生した笑いと拍手の平均的な音量」です。

ネタ時間を同一だと仮定することで、笑いや拍手の平均的な大きさを比較したい場合に使います。

前掲の図では、(水色部分の面積+ピンク部分の面積)÷ネタ時間で求めます。

集計結果

今回の3組の計測結果をまとめたのが下表です。

M-1グランプリ2024審査結果と笑い・拍手の音量スコアとの比較

9人の審査員のうち5票を獲得して優勝した令和ロマンは、前回大会に引き続き、笑い・拍手の最大音量、合計音量、平均音量はいずれも1位でした。加えて、先に指摘したように笑いや拍手が尻上がりに増える理想形となっていましたUKETAによる計測結果では、令和ロマンは文句なしの優勝だったことがわかります。

バッテリィズは審査員から3票を獲得して準優勝でした。一方でUKETAを用いた計測結果を見ると、最大音量・合計音量・平均音量のいずれも3位でした。最後に盛り上がりどころを持ってくる構成の良さやキャラクターの良さ、内容のわかりやすさも加点対象となったためか、審査員の評価はより高いものになったと考えられます。

真空ジェシカは審査員からの得票数は1票のみでした。一方で、笑い・拍手の最大音量・合計音量・平均音量のいずれも2位でした。特に合計音量や平均音量のスコアは優勝した令和ロマンに迫るものがありました。スコア以上に評価が下がってしまった要因としては、出番順の不利さや笑い・拍手の発生が中盤でピークになり展開が理想形ではなかったこと、ネタの中身が他の組より伝わりにくいものだったことなどが考えられます。

補足
補足

注意点
以上はあくまでも放送の音声を解析した結果です。音量などの調整をしていない前提での比較です。ただし、実際は音響担当者が随時音量などの調整をしているはずです。ですので、今回の結果は、あくまでも参考程度にしてください。

WARAI+ではより正確な現地での出張測定や今回のような音声データの解析サービスも提供しております。詳細はお問い合わせください。

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