笑い解析・採点AI「UKETA」を使ってM-1グランプリ2023の笑いと拍手の解析をします。
今回は、決勝戦の最終決戦の解析です。
決勝戦・最終決戦で特にウケたシーン
TVerで放送された決勝戦・最終決戦の音声をUKETAで解析していきます。
M-1グランプリ2023決勝戦・最終決戦(TVerで視聴する)
特にウケた箇所を中心にピックアップします。
解析区間はネタ開始~ネタ終了時のBGM直前までです(自己紹介時の拍手はカウントしません)。
1組目:令和ロマン
令和ロマンの漫才のテーマは「おすすめのドラマ」。髙比良くるま氏が自らおすすめするドラマのワンシーンを次々と再現していきます。その卓越した表現力と松井ケムリ氏の小気味よいツッコミで大爆笑を何度も誘いました。

縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(秒)。

(くるまがケムリの顔一周つながったヒゲを指して)
くるま:「顔で、もんじゃ作ってないの?」
ケムリ:「顔でもんじゃ作ってねえよ、土手じゃない」
自己紹介的なツカミで、早い段階でお客さんとの距離をグッと縮めました。これがこの後の笑いの大きさに大きく影響した可能性があります。
(くるまが工場での煩雑な作業を表現して)
くるま:「単純作業ばっかでつまんねえな」
ケムリ:「どこが!??」
工場でのさまざまな作業を身体をつかって豊かに表現して、いったいどんな工場なんだろう!?と観客の想像を膨らませ、結果、大きな拍手笑いにつながりました。本作で最もウケたのはこのシーンでした。
(くるまが工場に現れた人を表現して)
くるま:「オモロかったら、なんでもええやん!ややんやんやんやーん!」
ケムリ:「よしもとには……こういう人がいます」
ラストにも、本作2番めの大きな拍手笑いが起きました。尻すぼみにならず、評価を高める終わり方です。
グラフからわかるように、特に中盤から後半にかけて大規模な笑いが周期的に発生する高得点パターンが見て取れます。
2組目:ヤーレンズ
ヤーレンズの漫才のテーマは「ラーメン店」。いわゆるコント漫才で、楢原氏が演じるおかしな店主のラーメン店に、出井氏がお客さんとしてやってきてツッコんでいくというもの。FIRSTROUNDと同様、楢原氏のキャラクターを存分に生かした漫才で多くの笑いを誘いました。

縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(秒)。

(ラーメンが茹で上がるのを待つ間)
楢原:「マジカルバナナします?」
出井:「いいんだよ、つながなくていいんだよ、茹でてるんだから」
楢原:「ハイ、マジカルバナナ、バナナと言ったら~」
出井:「丸美屋~♪」
(楢原が車をバックさせるしぐさで麺の湯切りをする)
出井:「えー、湯切りカッコイイんだけどー!」
元々、駐車場だった土地にラーメン屋が立ったということにちなんだボケで、本作1番の大きな拍手笑いが発生しました。
これらのシーンはどちらも、ツッコミ役の出井氏がボケに乗ったときに大きな拍手笑いが出ました。
漫才全体としてみると、笑いの規模としては令和ロマンに負けますが、観客を飽きさせない手数の多さは令和ロマンを上回っていました。
漫才中に出てくる「ベンジャミンバトン数奇な人生」は成長するにつれて若返っていく男性のファンタジー・ドラマ映画ですが本作はそれを下敷きにした構成となっており、店名が「麺ジャミンバトン」で「スープなラーメン」を出します。最初に言うべき「いらっしゃいませ」を最後に言う構成で、全体の構成のよさが高評価につながった要因の一つだと思います。
3組目:さや香
さや香の漫才のテーマは「見せ算」。令和の時代にはあたらしい計算方法が必要だと主張して新山氏が「見せ算」を提案します。見せ算は「数字の気持ち」をもとに計算するという独特のものです。

縦軸は笑いや拍手の音量の推定値。横軸は時間(秒)。

(新山がマイクの前に立って「見せ算」の計算方法について熱弁する)
石井:「戻ってこい、立ち位置ここやろ、おかしいやろ」
新山:「漫才にとって重要なことって、立ち位置じゃないんですよ、掛け合い!」
石井:「どこが掛け合いやねん!」
新山氏の一方的な説明が続き、石井氏のツッコミが観客の同意を得る形で本作一番の大きな拍手笑いが出ました。
全体的に理解が難しく、観客にとってイメージがわきにくい内容が続き、拍手笑いが少ない漫才でした。後半のように数学に見せかけて実は主観で計算結果を決めるナンセンスさが前面に出ていれば気楽に鑑賞できたのですが、序盤は「見せ算」に関するルールが説明され、それを覚えておかなければ笑えないと観客に思わせてしまったところが序盤の笑いの少なさにつながったのではないでしょうか。
審査結果とウケた指数との比較
さいごに、審査員の票数とグラフに用いた笑いや拍手の音量スコアの平均、最大、合計との比較をおこないます(水色グラフの集計です)。

審査員から4票獲得して優勝した令和ロマンは笑いや拍手のスコアの平均、最大、合計はいずれも1位でした。数値上では文句なしの優勝だったことがわかります。
ヤーレンズは審査員から3票を獲得しました。得票数としては優勝した令和ロマンに肉薄しましたが、笑いや拍手のスコアは、平均と合計で2位、最大では3位でした。小~中規模な笑いの数は多かったものの、大規模な笑いが少なかったことが響きました。
さや香は残念ながら審査員からの得票数はゼロでした。笑いや拍手のスコアの最大は2位でしたが、平均や合計では、ほかの2組に大きく後れをとった結果となりました。

以上はあくまでも放送音声での解析結果です。音量等の調整をしていない前提での比較ですので参考程度にしてください。WARAI+ではより正確な現地での出張測定を行っております。詳細はお問い合わせください。