【キングオブコント2023】笑い・拍手の発生状況をAI解析でグラフ化【ファイナルステージ】

キングオブコント

笑い解析・採点AI「UKETA」を使ってキングオブコント2023の笑いと拍手の解析をします。

UKETA(ウケタ)とは?

ファイナルステージで特に盛り上がったシーン

TVerで放送されたファイナルステージの音声をUKETAで解析していきます。

特にウケた箇所を中心にピックアップします。

1組目:ニッポンの社長

ニッポンの社長のコントのテーマは、「手術」です。手術中の新米外科医と患者とのやりとりで笑いを誘います。

90秒付近

(外科手術中)
外科医(ケツ):(小さな器官を摘出)
外科医(ケツ):(小さな器官を摘出)
外科医(ケツ):(中くらいの器官を摘出)
外科医(ケツ):(中くらいの器官を摘出)
外科医(ケツ):(胃のような器官を摘出)
外科医(ケツ):(腎臓のような器官を摘出)
外科医(ケツ):(腸を1メートル摘出)
患者(辻):(麻酔中にもかかわらず、むくりと起き上がって)
患者(辻):「ちょっと、出しすぎちゃう?

緊張→緩和の流れが笑いにつながるというオーソドックスなパターンがうまくハマっています。

補足
補足

今回は一つ一つの笑いや拍手の大きさに着目するために、以前より細かい時間幅で表示します。

見やすさを考慮し、グラフを前半と後半に分割しました。

グラフの縦軸は笑いや拍手の発生時の音量にAIスコアを加味して算出した「爆笑の程度」です。

これは音量ベースの指標で、笑いや拍手以外の音成分の影響を低減させたものです。

横軸には「時間」(秒)をとっています。


320秒付近(ラスト)

外科医(ケツ):(大きな目玉付きの不気味な臓器を摘出して)
外科医(ケツ):「まあ、あるやつです
患者(辻):「ないやつやろ!

最後は不条理オチで大きな笑いを誘いました。


このコントは、他の組とくらべて拍手が多く発生しました。手術の緊張感が手伝ってか、一つ一つの笑いや拍手は大きかったです。

UKETAスコア ニッポンの社長
  • 平均推定音量:笑い0.061(2位)/笑いと拍手0.108(2位)
  • 最大推定音量笑い1.27(1位)/笑いと拍手1.24(2位)
  • 推定合計時間:笑い74.1秒,3位(23.0%,3位)/笑いと拍手87.8秒,3位(27.2%,2位)

構成は、序盤こそ笑いがほぼありませんが、笑いや拍手の発生傾向はしり上がりで好印象を与えやすいものでした。

以上のことから、観客にウケた程度(笑いや拍手のクオリティ)としては、ファイナルステージは2位でもおかしくはなかったと思います。ただ、笑いのパターンとしては同じ種類の笑いが多い嫌いはあったかもしれません。

2組目:カゲヤマ

カゲヤマのコントのテーマは、「事件の動機」です。ある日、会社の上司のデスクに、人糞が置いてあった事件を受けて、その犯人が優秀な部下だったということが発覚します。
その動機を探ろうとする上司と、動機を語りたくない部下。困った部下は、次々と衝撃的な暴露をしていきます。

90秒付近

(上司のデスクに何者かの人糞が置いてあった事件を受けて)
上司(タバやん。):「会社のみんなの髪の毛を集めてDNA鑑定に出したんだよ」
部下(益田):「DNA鑑定……」
上司(タバやん。):「その結果が今日出たんだよ」
上司(タバやん。):「益田君のDNAと一致したよ」
(長い沈黙)
部下(益田):「ぼくは、どうなるんですか……?
上司(タバやん。):「思ってた言葉と違ったよ

こちらもニッポンの社長と同じ、緊張の緩和パターンを基本としています。


200秒付近

(人糞をデスクに置いた理由を探って)
上司(タバやん。):「理由を教えてもらえない限り、最初の部屋のカギが開かないんだよ」
上司(タバやん。):「益田君じゃないと開けられないんだ」
上司(タバやん。):「益田君、なぜあんなことをしたんだ?」
部下(益田):(突然土下座をして)
部下(益田):「部長の娘さんとお付き合いをさせていただいております!
上司(タバやん。):「そのカギじゃなーい!

単調にストーリーを進行させず、新たなオドロキを加え笑いを生み出しています。


人糞事件の謎解きという女性がなかなか笑いにくいネタでした。今回の観客はほとんどが若い女性だったためか、笑いの音量は控えめでした。
拍手もほかの組に比べるとかなり少なかったことが見て取れます。

UKETAスコア カゲヤマ
  • 平均推定音量:笑い0.057(3位)/笑いと拍手0.068(3位)
  • 最大推定音量:笑い0.93(3位)/笑いと拍手0.93(3位)
  • 推定合計時間:笑い79.3秒,2位(23.1%,2位)/笑いと拍手89.1秒,2位(26.0%,3位)

ウケた程度(笑いや拍手のクオリティ)を見ると、3位のランクでもおかしくはなかったかなと思います。

ただ、このコントは緊張の緩和だけでなく、笑いのパターンとして様々な工夫がみられます。土下座という動きの工夫、立場の逆転、最後には新たな謎の出現をさせます。

展開が気になる構成のため、3組中最も長時間のネタだったにもかかわらず、退屈させず、笑いや拍手が少なめだったという印象は与えにくかったのかもしれません。

3組目:サルゴリラ

サルゴリラのコントは「高校野球の監督と部員」のやりとりです。甲子園出場がかなわなかった3年生の部員が、「大学では野球をしない」という考えを監督に明かします。
それを聞いた監督は野球の練習を続けてプロを目指すように説得します。

150秒付近

(「大学では野球をしない」という部員の言葉を聞いて)
監督(赤羽):「お前は間違ってる!」
監督(赤羽):「人生は思い通りにならないものだ。」
監督(赤羽):「人生という『魚』はいつだってスイスイ泳げるわけじゃない。」
監督(赤羽):「人生という『魚』も溺れるときがあるんだよ。」
監督(赤羽):「でもそんなときは、夢という『魚』を目安に泳げばいい。」
監督(赤羽):「夢という『魚』はなかなか見つけられない、貴重な『魚』だぞ。」
監督(赤羽):「夢という『魚』は人生という『魚』の道しるべの『魚』なんだよ。」
部員(児玉):「でももう、決めたことなんですよ!」
監督(赤羽):「時間という『魚』はたくさん泳いでいる。」
部員(児玉):「とにかくもう、野球辞めます!」
監督(赤羽):「後悔という『魚』が泳いでいくぞ!」
部員(児玉):「『魚』やめろー!
部員(児玉):「なんで全部『魚』で言ってくるんですか?

青春の一場面で、本来まともなことを言うことが期待される大人の監督。
説得の方向はまともで、口調もまともですが、「魚」のたとえを繰り返し使うというズレが笑いを生み出します。


200秒付近

監督(赤羽):「お前は絶対にプロになれる。話を聞くんだ!」
部員(児玉):「じゃあ絶対、『魚』はやめてくださいよ!」
監督(赤羽):「わかったから聞け!」
部員(児玉):「『魚』やめろよ!!」
監督(赤羽):「いいから聞けー!」
(BGMが流れて)
監督(赤羽):「『魚』は……

250秒付近

監督(赤羽):「昔、お世話になった『魚』がいてな」
監督(赤羽):「その『魚』が言ってた」
監督(赤羽):「『魚は魚の上に魚を作らない』
部員(児玉):「何の話だよ!

中盤以降は、様々な角度から魚のたとえを繰り出して笑いを誘います。


ほかの2組が笑いにくいシチュエーションのコントを披露したなか、サルゴリラは高校野球の監督と部員という安心して笑えるオーソドックスなシチュエーションのネタを披露しました。

内容はなんでも「魚」でたとえて部員を説得しようとする監督という独特の世界観のもの。
魚のたとえも「的を射ているとき」と、「そうでもないとき」の行ったり来たりの揺り戻しを基本に、多くの笑いや拍手を誘いました。アンリ・ベルクソンは著書『笑い』で「生なるもののぎくしゃくしたこわばりが笑いを生む」としました。ここでは「魚のたとえに執着する」というこわばりが笑いを生み出しているとみることもできます。

UKETAスコア サルゴリラ
  • 平均推定音量笑い0.107(1位)/笑いと拍手0.157(1位)
  • 最大推定音量笑い1.27(1位)/笑いと拍手1.43(1位)
  • 推定合計時間笑い90.4秒,1位(32.6%,1位)/笑いと拍手106.2秒,1位(38.2%,1位)

全体の展開はしり上がりで好印象です。最後を大笑いで締められなかったことが唯一の心残りかもしれません。
それでもウケた程度(笑いや拍手のクオリティ)は3組中、断トツで1位でありながら、構成の秀逸さや演技力のよさも加わって、ファーストラウンドとあわせて歴代1位のスコアで優勝しました。

審査結果と「笑い・拍手指数」との比較

さいごに、ウケた程度(笑いや拍手のスコア)と、審査員のつけた得点との比較をおこないます。

すでに指摘したように、優勝したサルゴリラはすべてのUKETAの指標で1位を獲得しており、笑いや拍手のクオリティは文句なしの優勝でした。

ニッポンの社長とカゲヤマを比べてみましょう。平均や最大の指標ではニッポンの社長、合計の指標ではカゲヤマが優れていました。ウケた程度(笑いや拍手のクオリティ)ではこの2組は競り合っていました。

キングオブコントではSE(サウンドエフェクト)やBGMを鳴らすこともルール上問題ないため、音量の推定はやや難しく、評価も難しい傾向にあります。

また放送音声は、音量調整やミキシングの都合上、現地でダイレクトに録音解析した場合より精度低下を起こしやすいです。そんな中、今回はUKETAを使って優勝のサルゴリラをうまく判定することができました。

AIによる笑い計測プロジェクトWARAI+ではAIのチカラを活用することで、公平な審査の実現、審査員の負担の軽減をできればと考えております。ご用命の際にはお気軽にお問い合わせください。

補足
補足

今回のようにBGMやSEが多用されるケースでは、音量の推定の都合上、上記指標のうち合計時間や割合の指標が有効のようです。

この点では漫才の評価方法とやや異なってきます。


実際にご依頼いただく場合は、こうしたケースごとに最適な評価方法の提案をいたします。

もちろん、独自の指標を組み込むカスタマイズも可能です。


また、使用するBGMやSEを事前に学習させることで、さらに高精度に判定させることが可能です(学習する量に応じて時間がかかります)。

タイトルとURLをコピーしました