劇場で笑いを測る時代!新しい「見える化」の取り組み

劇場で笑いを測る理由?
みなさんはテレビのお笑い番組を見ていて、審査員がつける点数に自分の感覚とのズレを感じたことはありませんか? それもそのはず、お笑いのプロである審査員は、芸の面白さではなく、素人では見極められない漫才やコントの技術を主として評価しているのです。 「こんなに面白いのに点数が低すぎる」「なんで面白くないのに点数が高いのか」とみなさんが感じてもそれは至極当然のことなのです。 では、純粋に誰が一番面白いのかを評価することはできるのでしょうか。 少ない人数による評価では、プロの審査員をもってしても好みの偏りが生じてしまい、不公平な評価しかできません。 考えうるもっとも公平な方法は、観客全員に笑いを測る装置を装着してもらい、その量をもとに評価することです。 「そんな夢の話」という声が聞こえてきそうですが、実際に観客の「笑いを測る劇場」は存在します。 そうした劇場では、どのネタがどれくらい笑わせたのかが数値で表されるため、芸人の側も腕を磨いて本気で観客を笑わせようとします。 今回はこの新しい笑いの「見える化」の取り組みを紹介します。
全席で笑顔測定(スペイン)

写真: THE DAILY MAIL
笑いを測る劇場の元祖は、スペイン・バルセロナのコメディ劇場。 2012年、スペインでは劇場に掛けられる税率が8%から21%激増したため、劇場側でも観覧料金の値上げをせざるを得ず、その結果、客足が劇場から遠のき減収に苦しんでいました。 そこで2013年にバルセロナのあるコメディ劇場が起死回生の策として始めたのが「pay-per-laugh」という制度。 pay-per-laughは「笑った分だけお金を払ってもらう」という意味で、この劇場の入場料は無料ですが、全席にiPadを取り付けて専用のアプリで観客の笑顔の数をカウントし、1回の笑顔で約40円払ってもらうことにしました。 また、観客に安心してたくさん笑ってもらうために、支払う料金の最大は約3300円としました。 つまらなかったらお金を払わなくてよいし、面白かったらその量に応じてお金を払うというこの仕組みは、大変好評を博し、劇場の収益は増加しました。 また、劇場に設置されたモニタでは、観客全員の笑いの総量を閲覧できるようになっており、芸人は自分たちの芸のどの部分が良かったのかを確認し自らの芸を磨くきっかけとすることもできます。 劇場・観客・芸人の3者に利益が得られるこのシステムはカンヌ広告賞の金賞を受賞したことでも話題になりました。 その影響もあり、類似の仕組みを導入する劇場が出てきています。
「笑福度」が測れる(日本)

写真: 吉本興業「よしもとニュースレター」2016年2月2日
2016年2月からの2か月間の期間限定ではありますが、日本でも笑いを測る劇場が登場しました。 それは大阪のなんばグランド花月(NGK)で、11席限定ではありますが観客の笑いを測ることができるシステムが導入されました。 料金設定は、pay-per-laughのような従量制ではなく、ほかの席と同額の定額4200円となっています。 特徴は、観覧中の笑顔度に加えて心拍数や呼吸数の計測も行い、それらの値をもとに算出したきめ細かい笑いの度数である「笑福度」を測れるようになっていることです。 また、各人が笑顔になったタイミングで写真を撮影してくれたり、11席のうち一番多く笑った人には記念品がもらえるサービスも実施されています。 面白さを計測される芸人からは「緊張する」という意見も出ていますが、観客にとっては自信のあるネタで挑む芸人の「本気」を見られるきっかけになっています。 この取り組みは現在、近畿大学、吉本興業、オムロン株式会社、NTT西日本がタッグを組み、笑いの医学的効果を検証する研究という形に変わっています。 「笑うと健康になる」ことに関してさらなる研究成果が得られたら、吉本のお笑い芸人が西欧のホスピタル・クラウンのように病院に派遣される日もありえるのではないでしょうか。
自宅ではスマホアプリで笑いを測ろう

写真: 株式会社大成情報技術
未来の劇場はすべて笑いを測ることができる設備が完備されているかもしれません。 いち早く未来を体験したい方は、自宅で笑いを計測してみてはいかがでしょうか。 現在、WARAI+では、スマートフォン(Android)で使用できる「WARAI+Recorder」(ワライプラスレコーダー)という笑い声の時間(単位:WARAI)を計測するアプリを公開しています。 イヤホンやヘッドホンお笑い番組等を見ながら同アプリで笑いを測ることで、笑いを測る劇場の疑似体験もできますし、意外な自分の笑いの好みが見つかるかもしれません。 大勢のほうがひとりでいるよりも30倍も笑いやすいという研究報告(Provine,1989)がありますので、家族や友人と一緒に笑いを測ることもおすすめです。 なお、計測の際には、イヤホンやヘッドホンを使用し、動画の音声がスマホのマイクから入らないようにするなどの必要がありますが、計測自体はとても簡単です。 ぜひお試しください。