グッと距離感が縮まる!笑いを「伝染」させる3つのポイント


笑いで距離感が縮まる

あなたが初対面の人やあまり仲の良くない人といるとき、一緒に笑うことによってその人との距離感をグッと縮めることができます。 では、どのようにすれば他人と一緒に笑うことができるのでしょうか。 初対面の人との距離感をはかり、その人の好みそうな話題を振り、ウィットに富んだユーモアで笑わせましょう!と言いたいところですが、それはプロの芸人でも難しいことです。 誰にでもできる方法としておすすめなのが、「自分から笑うこと」です。 笑いには強力な伝染力(=伝播力)があり、誰かが笑っているだけでその場の雰囲気を笑いやすいものに変え、他の人にも笑いがうつっていくのです。 今回は笑いの伝染力と笑いを伝染させるためのポイントを紹介します。

笑いは「伝染」する

笑いが他人にうつることを専門用語で「笑いの伝染」と言い、笑いがまるで疫病のように、どんどん他人にうつって広がっていくことを表しています。 この笑いの伝染力を示す事例として有名なのが1962年にタンザニアで起こった「タンガニーカの笑いの大感染」(Tanganyika laughter epidemic)です。 この現象は、タンザニアのある学校において数人の少女が笑っていたことに端を発し、その笑いが学校の生徒中に伝播したため学校は何日もの間、閉鎖を余儀なくされたというウソのような本当の事件です。 その後、笑いは収束せずに他の学校や村全体へ伝播していき、合計で14の学校が閉鎖しおよそ1000人に影響を及ぼしたという記録が残っています。

笑いが伝染するポイント1 笑顔

「笑いの伝染」と言うと少し厳めしい印象を覚えますが、なにも特別なことではなく、私たちも日常生活の中で気づかないうちに笑いをうつしたりうつされたりしています。 代表的なのが、「笑顔」を媒介とした笑いの伝染です。 例えば、飲食店、洋服店、ホテルなどに入ったとき、係員が笑顔で微笑んでいると、つられてこちらも笑顔になることはよく経験することでしょう。 なお、笑顔になれば自然とポジティブな感情が出てきますので、入店時点ではサービスをまだ受けていない状態なのにもかかわらず、その後受けるサービスへの評価が自然と上がりやすくなることにご注意ください。 接客業の人がお客さんと接するときに笑顔を絶やさないよう訓練を受けるのは、笑顔が好印象を与えるからという理由もありますが、お客さんに笑顔をうつらせて知らない間に満足感を与えるためでもあるのです。 似たような事例として、生まれたての赤ん坊の生理的な笑顔である「新生児微笑」があります。 生まれたての赤ん坊は愉快だからニコニコ笑っているわけではなく、本能的に笑顔を出すようになっており、それによって自分の世話をしてくれる人(おもに両親)の笑顔を誘引し、気づかない間に自分に対する満足感を植え付けているのです。 大人にとっては何気ない笑顔に見えますが、赤ん坊にとっては自分のお世話を継続的にしてもらうための重要な生存戦略となっているのです。

笑いが伝染するポイント2 笑い声

笑い声を媒介として笑いが伝染することもよく経験します。 それをいかした事例として有名なのがテレビ・ラジオ番組の「ラフ・トラック」(Laugh track)です。 テレビのバラエティ番組などを見ていると、タレントが「面白い」行動をした後に不自然な大勢の笑い声が挿入されていることがあります。 この笑い声のことを「ラフ・トラック」と言い、視聴者の笑いを誘発するために制作者が番組を編集する際に意図的に挿入しているものなのです。 最近のテレビ番組では観客席の笑いを直接録音するなどしてごく自然なラフ・トラックを使うことが多いですが、一昔前のドリフやアメリカのコメディを視聴すればその存在に容易に気づくことができます。 また、「笑い袋」というボタンを押すと笑い声が流れるおもちゃもありますが、これもまさに笑い声を用いて笑いを誘発する商品ですね。 笑うとポジティブな感情が生まれ、番組や商品に対する満足感が出やすくなるので、こうした手法が使われるのです。

笑いが伝染するポイント3 視線

笑い声や笑顔に加えて、もうひとつ私の大学院の恩師が発見した笑いが伝染するきっかけがあります。 それは「視線」です。 詳しい説明は別の機会に譲りますが、これは笑い測定の実験中に被験者同士が目と目を見合わせたことをきっかけとして笑いがうつったことから発見された現象です。 実験の例を出さずとも、相手がほとんど無表情で何を言わなくても、目だけが笑っていて思わず笑いがうつってしまったという経験はほとんどの人はしているはずです。 そう「にらめっこ」はまさに視線でうつる笑いを利用した遊びなのです。 「目は口ほどに物を言う」という表現があるように、視線は人間のコミュニケーションの中でも重要な役割を果たしています。 笑顔や笑い声だけで笑いがうつらない場合、視線を組み合わせると効果が出てくる場合があるのでぜひ試してみてください。

そもそも「笑いの伝染」はなぜ起こる?

人間は社会を形成して生きる動物であり、自分ひとりの力だけでは生きていくことは困難です。 ときには他人の立場なって物事を考え、相互の利益や社会全体の利益になるように利害を調節をする必要があります。 笑いが人から人へ伝染する理由は、現在のところ、この他人の立場を読み取る機能が人間の脳にそなわっているためだと考えてれています。 実際、ミラー・ニューロンという霊長類などの高等動物が有する脳の神経細胞のはたらきにより、わたしたちは他人の行動を見聞きした際でも、まるで自分がその行動しているかのような脳の活動が生じていることがわかっています。 笑いだけでなくさまざまな行動や感情を「伝染」させてわたしたちは生きているのです。

まとめ

1.笑顔をつくり、2.笑い声を上げて、3.視線を合わせる、これが笑いを伝染させるための基本的なポイントとなります。 ただし、注意していただきたいのは、あなたが突然街中で笑い始めて、知らない人の目を覗き込んでもその人は笑わないかもしれません。 笑いを伝染させるためには実はもう一つ大事なポイントがあるのです。 次回はその理由を解説しますのでお楽しみに。

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