笑いがどんどん増える?笑いでプレイするゲーム
当コラムでは、「なぜ笑いを測るのか?」という記事で笑い測定の活用法の概要をご紹介しました。 その中で、「笑って操作するゲーム」の構想について触れましたが、じつはWARAI+を立ち上げる以前に、制作事例があるのです。 今回はその詳細についてご紹介します。
気軽に笑わせ、笑う文化
私は千葉県出身で、笑い測定機の研究をしに大阪に来る前までは、お笑いはプロの芸を見て楽しむものだと思っていました。 しかし、それは異なりました。 大阪では、他人を笑わせようとする人が多く、また、笑うほうも自ら積極的に笑って楽しむ雰囲気があります。 笑いを「消費」するばかりでなく、笑いを積極的に「生産」しているのです。 気軽に冗談を言いあうそのさまは、少しふざけたぐらいでは失礼にあたらないし、むしろ、スマートな冗談を言える人が好感をもたれるという文化があると思わざるを得ません。
なぜ、そのような文化になったのでしょうか。諸説はありますが、大阪は江戸時代に「天下の台所」と呼ばれた商都であり、そこで暮らす人々にとってコミュニケーションが重要項目の一つです。 笑いにはコミュニケーションの円滑化や集団の凝集性を高める機能があります。 笑いを契機として商取引がスムーズになり、また、人と人との距離感が近いものになっていったのではないでしょうか。 笑いを含むコミュニケーション能力が高い商売人ほど繁栄・生存するため、求められる笑いコミュニケーション能力はますます高くなっていく、ということまで考えられます。 つまり、商売と笑いとの親和性の高さから、大阪の笑いの文化が形成されていったと考えられるのです。

大阪の文化と笑い
笑って操作するゲームを開発!
こうした大阪の文化にふれたからということもあって、笑いを「消費」するだけではもったいないと考えました。 通常のゲームでは、ゲームをプレイした結果、楽しければ笑って、楽しくなければプレイをやめるという風に、笑いはゲームの結果「消費」するものでしかありません。 しかし、発想を逆転させて、「笑わないと遊べないゲーム」があったら必ず笑って楽しめるはずです。 笑いの「生産」をゲームの必須要件にすることで、ゲームは笑いの従属物となるのです。 ゲーム自体が面白いものであれば、無理なく笑え、さらに笑いを増幅する効果も期待できます。

笑いのゲームのコンセプト
「笑って操作するゲーム」は、具体的には通常のゲームではボタンを押したりする入力部分を笑い声の有無に置き換えてみました。 ゲームの内容としては、企画段階では様々なアイデアが上がりましたが、笑いの入力が際立つようシンプルでゲーム性が高いことを考慮し、2名が笑いの量で競う「笑いの玉入れゲーム」を制作しました。

ゲーム開始前 カウントダウン中

ゲーム中 ゲラゲラ笑っています

ゲーム終了時 一つの玉が約0.2秒の笑いに相当します
笑いの玉入れゲームでは、2人が各々持つスマートフォンで笑い声を測り、その結果がリアルタイムで無線経由でパソコンに送信されるシステムになっています。 両者の笑い声を分離するために声帯の震えを取得する接触型のマイクロフォン(咽頭マイク、咽喉マイク)をプレイヤーは喉に装着します。 パソコン上では10秒間の笑い声が多かったほうが勝ち、というシンプルなゲームが進行します。 このゲームは笑いの量に応じて、笑い顔の玉(通称:笑い玉)がどんどん落ちてきて物理計算でスーパーボールのように玉が跳ね回るという視覚的にも楽しめる仕様です。 なお、スマートフォンと咽頭マイクのセット人数分用意すれば5名対5名というチーム戦も可能です。

笑い計測装置

笑い玉入れの仕組み
笑いの玉入れゲームの効果は?
笑いの玉入れゲームを各所で披露してコンセプトを説明し、多くの人にプレイしてもらいました。 説明が不要なくらいシンプルなシステムなので、若者でも高齢者でもすぐに楽しめます。 ただし、高校生くらいの年代だと多人数の面前で笑うのを恥ずかしく感じる傾向があるようです。
笑いの玉入れゲームの効果は、プレイヤーが「必ず笑う」ことに端を発します。 プレイヤーは面白くもおかしくもなくて笑うので最初は大変ですが、少し笑えばゲラゲラと自然に笑うことができるようになります。 また、対戦相手のプレイヤーも笑うので一人で笑うよりとても笑いやすいのもポイントです。 笑いが他者にうつる「笑いの伝染」効果が相互に生じるのです。 さらに、周りで見ている人たちにも笑いが伝染するので、周りの人も楽しむことができます。 周囲の人が笑うと空間の雰囲気に一体感が出ます。このような状況になると、プレイやーもより笑いやすくなるという「笑いの循環」効果も生じるのです。 初対面の方同士のアイスブレイキングとしてはとても効果的なゲームといえます。

周囲の笑いがプレイヤーの笑いを促進
笑いを入力として用いるゲームは、個人用のアプリなどにも応用できるのでさまざまな構想があります。 どうぞご期待ください。
WARAI+では人工知能を用いた笑いの認識技術を提供していますが、笑い全般の情報を今後も提供していきたいと思います。