笑うと頭がよくなる?大笑いで脳を活性化しよう!

笑いと健康シリーズ(2)脳活動

仕事に行き詰ったとき、勉強に疲れたとき、みなさんはどんなことをしていますか?
身体を休めるのも一つの手段ですが、ここが踏ん張りどころというときには「笑うこと」もぜひ候補に入れてみてください。
最近の研究では、笑いには脳の血流を促進する効果があることや、笑いによって脳の活性化とリラックスが同時に起こっていることもわかっています。
さらには笑うことによって「集中力」、「注意分配力」、「知的柔軟性」、「短期記憶力」が向上するという結果も出ています。
たんに身体を休めることを「守りの休憩方法」とするなら、笑うことは「攻めの休憩方法」といえます。
今回はこのような笑いが脳に与える短期的な効果を紹介します。

笑うと脳の血流量が増加する

最近の笑いと健康に関する調査・研究の隆盛には目を見張るものがありますが、その潮流に乗って笑いと脳との関連についても様々な観点から調べられています。
先駆けとなるのは、中央群馬脳神経外科病院理事長でありプロの落語家桂前治としても活躍されていた中島英雄先生の実験です。
同病院の「病院寄席」において脳疾患の患者さんの落語の鑑賞前後の脳の血流量を調べたところ、落語を見た後では、64%の患者さんの脳の血流量が増加していました(減少した人は23%)。
なかでも、脳の血流量が増加したのは落語を面白いと感じた人であり、脳の血流量が減少したのは落語がつまらなく感じた人たちだったということから、落語が面白くて笑った人の脳の血流量が上昇したことがわかりました。
(中島英雄,2001,『病気が治る!?病院のおかしな話――笑いは心と体のビタミン剤』リヨン社.)

笑うと脳が活性化しリラックスする

前出の実験では落語鑑賞前後の脳の神経活動についても調査されました。
落語を聞いた後の患者の脳には、人間がリラックスしているときにあらわれる「アルファ波」と考え事をする際にあらわれる「ベータ波」が増加し、その一方で、脳の機能の低下を示す「デルタ波」と「ガンマ波」が激減していました。
このことから、笑いによって脳の活性化とリラックスが同時に起こっていることがわかりました。
この脳の状態はいわば「精神が研ぎ澄まされた」状態であり、特に試験や試合の時にちょうど良い状態といえます。
オリンピック等で一流の選手が競技前に笑顔を見せるのは、大舞台で愛想を振りまくためではなく、こうした笑いの効果を知っていて戦略的におこなっている面が大きいのです。

笑うと集中力と注意分配力が向上する

「集中力」や「注意分配力」を検査するために実施される「かなひろいテスト」というテストがあります。
これはひらがなで書かれた物語を読んで、物語の意味を理解しながら母音(あいうえお)に印をつけていくという、2つのタスクを並列で処理することが求められるテストです。
中島英雄先生が落語を聞く前後の患者さんに「かなひろいテスト」を実施したところ、落語の後のほうが成績が向上していました。
滋賀医科大学の畑野相子先生の研究でも同様の実験を実施し、同様の結果が得られました。
一般に、笑うと集中力がそがれてしまうイメージがありますが、それは笑っている最中のことであり、一度笑った後には頭の中がリセットされ、集中してクリアに物事を考えられるようになるのです。

笑うと知的柔軟性と即時記憶力も向上する

畑野先生は前出のかなひろいテストとあわせて「知的柔軟性」を試すための「言葉の想起テスト」と「即時記憶力」のテストも行いました。
「言葉の想起テスト」とは、「あ」からはじまる言葉などのテーマを設け、制限時間内になるべく多くの言葉を書いてもらうテストです。
また、即時記憶力のテストとは、7桁の数字を3秒間だけ被験者に提示して覚えてもらい、数分後に思い出して答えてもらうテストです。
テストはそれぞれ2回ずつ行われ、笑いの程度の大きい1回目にのみ有意にテストの成績が向上していました。
このことから、認知機能の向上・改善には小さい笑いではなく大きな笑いのほうが効果があることが示されました。
(畑野相子,2009,「笑いが脳の活性化に及ぼす影響」『人間看護学研究』7: 37-42.)

まとめ

笑うと脳の血流量が増加し、脳の活性化と脳のリラックスが同時に起こり、集中力、注意分割力、知的柔軟性や短期記憶力がアップします。
そして、小さな笑いよりも大きな笑いのほうがより効果的であることがわかっています。
仕事や勉強は根を詰めて長時間やるのも一つのやり方ではありますが、合間の時間に大いに笑うことによってむしろ勉強や仕事の効率は上がるものです。
あなたも笑う仕事術・勉強術を導入してみませんか。

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